不毛地帯

いつか、こういう日がくるであろうことは、うすうす感じていた。。

けれど、こんなにも早くやってくるとは。。。

                                                              

ダンナさんは読書好き。

毎月かなりのピッチで本を読む。

家から会社までちょっと遠いので、行き帰りの電車の中で読書タイムを楽しむらしい。

そんなダンナさんが、今、はまっているのが、”山崎 豊子”。

”白い巨塔”にはじまり、”ムッシュ・クラタ”、”華麗なる一族”、、、。

この間は、”沈まぬ太陽”を一気に5冊、あっという間に読んでいた。

「も~ おもしろいっ!! ゾゾゾーっとするくらいおもしろいっ!!」、、、そうだ。

いつのまにか本棚の一部分には、山崎豊子の本がダダダーっとならんだ。

                                                              

”ならば、私も読んでみようかな、、。”と思い、「ねー、この中で、どれがいちばん面白かった?」と私がダンナさんに聞くと、ダンナさんの人差し指は迷わなかった。

「う~ん、これやろうねー。」。

サッと指差された本を私はみて、一瞬、ポカン。

そして、プップー、、ガハハハハーっと、笑いがこみあげた。

本の名は、”不毛地帯”。

私のツボにドスンとはまった。

思わず、私の視線はダンナさんの頭に、、、。

                                                             

そう、ここにきて、ダンナさんの頭の毛がどんどんと抜けていき、一部、ほぼ不毛地帯。

いまや、アルシンド状態に限りなく近くなりはじめているのだ。

抜けていく髪たちにエールをおくるため、私は時々、「前衛~ ファイト!」「ファイト! 」「ファイト!」と片手をふりあげて応援する。

(ダンナさんはそれにテンポよく「ハイっ!」 「ハイっ!」 「ハイっ!」と、合いの手をいれてくる。)

ここは、前衛(前髪のこと)にいっちょがんばってもらわないと、ダンナさんの頭は、カッパになってしまう。。

(ダンナさんの不毛地帯の手前に防波堤のように力なくよりそっている前髪、、、それは実にけなげなのだ。)

が、その甲斐むなしく、日々、抜けていく一方。。

                                                           

この状態になる前に私は、一応、ダンナさんに言った。

「のせるなら今だよ。」。

そう、カツラをのせるなら今よってこと。。

けれど、どうもカツラはお気に召さないらしく、今日に至った。

思えば、結婚した時から、なんとなーくそんな前兆があり、「う~ん、これは、はげるなー。」とは直感していた。

けれど、こんなに早く来るとは、、、!!

抜け毛にきくというローションも、豚毛ブラシも買って、一通りやってはみたけれど、、、。

                                                           

最近、ソファに座って、豚毛ブラシで前衛(前髪)を奮い立たせているダンナさんをみると、胸が痛む。

そして、昔、私と姉が、親戚のおじさんのことを、「ハゲおじさん。」と、なんの躊躇もなく呼んでいたことを思い出す。

実際、おじさんは、頭の中央がツルンツルンにはげていたので、私たちは、そう名づけた。

おじさんに面とむかって「ハゲおじさん。」とは言わなかったことだけが、今となっては唯一、救われる思いがするけれど、「えっ、、、今日は、ハゲおじさんの家に行くの?」とか、「ハゲおじさんの家のサチ(犬の名前)はさあ、、。」などと、何の悪意もなく、おじさんのあだ名である”ハゲおじさん”は、私の家の中での会話に、とびかっていた。

                                                             

いや~、子供は直球だけに恐ろしい。

そして、ダンナさんもまた、”ハゲおじさん”に着々と近づいていることが、さらに恐ろしい。。

                                                           

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P.S.

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(迷惑メールがいっぱいくるため)

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姉の本

姉が料理の本を出版してから、かれこれ8年くらいたつ。

”だれか来る日のメニュー”(文化出版局)という本が、姉が初めて出版した本なのだけれど、最初に、本屋さんで、あの本を目の前にした時のドキドキ、そして驚きは、今も忘れられない。

                                                              

”姉が本をだす”という話を聞いたのは、姉からではなく、母・よしこの口からだった。

ある日、よしこが私の家に遊びに来て、いっしょにお茶していた時のこと。

よしこは、「あっ、そうそう、ちはる(私のこと)ちゃん。」と言って、”そーいえば、思い出した”という風に、”姉が本をだすらしいこと”を私にきりだした。

その時のよしこの言い方が、あまりにも緊張感がなかったのも手伝って、私がよしこに言ったのは、「、、、えっ? ママ、”ほん”って、なーに?」という気の抜けるようなひと言。。

”姉”と”本をだす”という事が、あまりにも結びつかなかった。

すると、よしこは、「いやー、り香(姉のこと)がねー、そう言うのよ。 ママにも、どういうことだか、さっぱりわかんないんだけど。。」。

続いて私がよしこに言ったのは、「ママ、、、、”本”って、何の本??」。

私には、どんなジャンルの本かさえも、想像がつかなかった。

すると、よしこは、「う~ん、なんか、お料理だとかなんとか言ってたわよ。」。

(二人、顔を見合わせ、しばし沈黙。。)

私とよしこの会話は、こんな感じだった。

                                                                  

小さい頃から寝ても覚めてもマンガを書くのが好きで、漫画家になり、マンガ本をだす。

小さい頃から写真を撮るのが好きで、フォトグラファーになり、写真集をだす。

そういう順序を経て、本というものは書店に並んでいる、、、というイメージが強かった私は、姉が本を出すときいても、書店に並ぶような本のことだとは、その頃、想像もしていなかった。

もちろん、姉は、お料理を作るのは好きだったけれど、姉の仕事は、お料理とは関係のない、広告代理店。

だから、ますますピンとこなかった。

                                                             

で、その時、よしこと二人、首をひねりひねりして、考えた結果。。

”姉が、本をだす”ということは、おそらくこういう事だろう、、、と、予想した。

”おそらく、姉は、会社内の新聞かなんかに、「ミニミニクッキング」のようなものを投稿しているんじゃないか。。

それが、なかなか好評で、小さな冊子にまとめられる事になったんじゃないか。。。”。

おそらくは、そういう類の本なんだろう、、、というもの。

姉は、当時、会社の方を家に招いて、手料理を作っては、ワイワイしていたので、それがもとで、そういうことに発展したんではないか、、、という私たちの読み。

                                                          

私は、それまでにも、何度となく、姉には驚かされたり、泣かされたりしてきた。

たとえば、、、。

姉は、いつも突然にきりだす。

「ねえ、ちはる(私のこと)ちゃん。 りか、海外青年協力隊に参加することにしたから。 もう、決めたから。」。

とか、アメリカ留学中も、「ちはる(私のこと)ちゃん、、、。よくきいて。 もう、り香、日本に住むことはないと思う。 おそらく、こっちに永住する事になると思うよ。。結婚も、国際結婚だね、きっと。。 でもね、アメリカと日本は、飛行機乗れば、なんて距離じゃないから、いつでも会おうと思えば会えるんだから。 心配しないで、ちはるちゃん。 大丈夫よ。」。

(海外青年協力隊の話を聞いた時は、「り、、、りかちゃん、、、、なんでまた、、、。」と、私は、茶の間で呆然と立ち尽くしたものだ。

だって、この時、私は、のん気にテレビを見ていた。

そんな無防備な私の横で、姉が、何の前置きもなく、こんな事をいうものだから、驚いたなんてもんじゃなかった。。

アメリカ永住宣言をされた時は、なんとか考え直してくれないか、、、と、私は、涙を、、、鼻水までだして、受話器を片手に号泣したものだった。)

                                                                   

が、そうキッパリ宣言したにもかかわらず、姉は、海外青年協力隊になることも、アメリカ永住することもなかった。

ちゃっかり日本にいた。

それどころか、私が、「り香ちゃん、、、。 そういえば、ちはる、あの時は、り香ちゃんが、あんな事言うもんだから、ビックリしたよ~!!」と言っても、姉は、ハッハッハー。

豪快に笑い、「そんなこと言ったっけ??? ちはるちゃーーん!!」とのけぞり、どうやら、言った記憶さえなくなっているらしかった。

                                                               

だから、”本を出版する”と聞いた時も、どこまでが”ホントのこと”で、どこからが、”単なる姉の希望”なのか、そのへんが私の中で、ぼやけた。

それは、家族も一緒で、父までも、「り香の言うことだから、、、。 この先、どうなるか、わからんな。。」と、妙に落ち着いていた。

きっと、”家族の誰かが本を出版する”なんてことになったら、飲めや歌えやの大騒ぎで、大盛り上がり、、、になりそうだけれど、そういう背景(姉の過去の言動)も手伝って、なぜか、”一人盛り上がる姉”を囲む家族は、意外にも、ひっそりとしたものだった。

かなり懐疑的だったといってもいい。

                                                             

あれから、8年。。

姉は、お菓子・ワインと枠を広げながら、気がつけばたくさんの本を出版した。

そして、気がつけば、私も、毎回、姉の本を楽しみにしている一人。

                                                           

私は、本屋さんが好きで、暇がある時は、本をゆっくり手にとって見たりするけれど、今だに、”お料理の本コーナー”へ行くときは、胸がドキドキする。

で、姉の本のコーナーに行くと、家にも同じ本があるにもかかわらず、必ず手にとって、あらためてサササッと読んだりする。

本屋さんで読むと、”姉の本”という感じがしなくて、またまた新鮮だったりするのだ。

で、姉の本の中に”そうちゃん”がでてくると、コリもせず、毎回、「そうちゃんって、、、うちの、あの、そうちゃん??」と、ドキッ!

”お料理の本コーナー”で、姉の本を手にとってる人がいたりすると、ドクドクと、なぜか胸の鼓動は高鳴る。

この間、行った本屋さんでは、「行正 り香」の名札が逆さになっていたので、なんか、”余計なお世話”な気もしたけれど、サッと名札をぬいて、ちゃんと正したり、、、と、なかなか健気な妹でもある。

                                                                

もし、本屋さんで、姉の本を手にした時、背後からヌーッと、何気に現れる女性がいたとしたら、、、。

それは、私かもしれません。。

                                                                 

P.S.

「おいしい??」にコメントを、どうもありがとうございました。

ここで、よしこの名誉のために言っておきましょー。

よしこのお料理は、ホント~に美味しいです!

一度、「”砂糖”と”塩”を勘違いした時の”すき焼き”」を口にした時は、驚きのあまり、イスから飛び上がりましたが、そういうドジがない限り、サイコーです。

やっぱり、”おふくろの味”は、私の作るお料理の原点になっています。。

                                                              

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