よしこと東京へ行く ~その3(完)
前回ブログのつづき
よしこが立っている、道端のアイスクリーム屋さんのまわりを、キョロキョロ見回したが、次男(2歳)のベージュのベビーカーは見当たらない。
私は、母・よしこに、「べビーカー、どこに置き忘れたか覚えてる?」と聞いた。
すると、よしこは、「あらやだ、、、ママったらベビーカー、どこまで押してたかしら、、、?? 覚えてないわ、、、。」。
そして、「どーしましょ!! やだっ、ちはるちゃん(私のこと)のバック、ベビーカーに置きっぱなしだわ!!」。
私は、「ちょっと見てくるから!」と言って、すぐそこにある、さっき立ち寄った(行列に並んだ)食べ物屋さんへ走り、お店の中をくまなく探した。
が、どこにもなかった。
店員さんに、ベビーカーが届けられていないか尋ねたが、このお店には、ベビーカーの忘れ物はないらしい。
”ベビーカーには、私のバックものっかっていること”を伝えると、「ああ、、、バックもですか、、、。」と、店員さんの声は急にトーンダウンした。
なんでも、落し物は、すべて、”落し物センター”に集められるシステムになっているらしいが、そこにも今のところ届けはないらしい。
私は、よしこのところにもどり、そのことを伝えると、よしこは、ガックリとうなだれ、「ちはるちゃん、、、もう、バック、でてこないわよ、、、。 きっと盗られてるわよ、、、。」と言った。
、、、と、そばにいた姉が、突然、まるで刑事のような口調で、「ちはるちゃん! バックは何色? どんな形? 」と、ものすごい早口で私に聞いた。
私は、それにつられて早口で、「黒! 四角! このくらい(の大きさ)! ショルダー! プラダ!」と、せきたてられるように答えた。
それを聞いた姉は、次の瞬間ピューッと駆け出し、あっという間に私の視界から消えて、いなくなった。
私のバックの中には、お金、クレジットカード、帰りの航空券、ホテルのキー、自宅のカギ、、、、と、とにかく大事な物は全て、入っていた。
よしこは、「ごめんなさいね~! もう、ママ、弁償するから!! こんなことになってしまうなんて、本当にどーしましょ!!」と言ってブルブルっと体をふるわせた。
私は、「もう少ししたら、”落し物センター”に届けられるかもしれないしさー、、、。」とは言ったものの、内心、”こりゃ、無理かもねー。。。”と、なかばあきらめの境地だった。
なにより、バックがでてこないとなると、まずは、カードをとめる作業、ホテルのキーの紛失届け、、、その他もろもろの手続きに時間をとられ、行列をはずれてまで楽しみにしていた夕食の時間は、さらに遅くなるだろう、、、そのことが、一番ショックだった。
よしこは、ずっと、「ど~しましょ?! ど~しましょ?!」、そして、なぜか、「パパ(よしこのダンナ=私の父)に怒られるわ~!!」と言っては取り乱していた。
、、、かと思ったら、時おり、パッと冷静になり、「ね~、ね~、あのバックいくらだった?」 「お財布の中にお金はいくら入ってた?」 「せっかく格安航空券だったのに、あれって、普通に買うといくらかしら?」と私に聞き、よしこ得意の”そろばん”を頭ではじいている様子で、「ま~っ!! とんだ高い旅行になっちゃったわ~!!」とかなんとか、ぼやいていた。
くるくると表情の変わるよしこを前に、”そういえば、り香ちゃん(姉のこと)は、いったいどこへ行っちゃったんだろう、、、??”という話になった。
”トイレにでもベビーカーを探しに行ったのかな?”と言ってしばらく待っていたが、姉はいっこうに、もどってこなかった。
私は、「ちょっと、さっきのお店にもう一度行って聞いてくるね。」と言い残し、さっきの食べ物屋さんへ走った。
すると、店員さんは、また、”落し物センター”へ電話してくれた。
と、店員さん、電話を片手に「、、、あー、ないですか、、、。 、、、はっ? ベージュのベビーカーに黒のバック、、、えっ、、、ありましたか? 、、、はあ、で、今、お姉様がそちらに引き取りに来られたんですね、、、。」。
と、その時、姉から電話があり、「ちはるちゃん!! あったよ~!!」。
もうダメかもしれないとあきらめかけていたので、あの時は、本当に本当にうれしかった。
ところで、姉は、どこへ行っていたかというと、、、。
姉は、ディズニーシーへは何度か訪れたことがあったため、当然、”ディズニーシーの出口”も頭にはいっていた。
もし、バックは盗まれたと想定して、、、。
おそらく”犯人”は、バックをかかえ、いちもくさんにディズニーシーをあとにするだろう、、、という読み。。
そこで、姉は、”犯人”を出口で張り込むため、出口を目指して全力疾走!
私の、”黒! 四角! このくらい! ショルダー! プラダ!”という暗号(?)を暗唱し、何回も復唱しながら、出口で”犯人”が現れるのを待っていたのだという。
”せっかく久々にちはるちゃんが東京へ遊びに来たのに、しょっぱなからバックを盗まれちゃあ、この旅行は台無しになる!! これは私が何とかせねば!!”と思い、とっさの行動となったらしい。
で、姉が出口でジーッと待っていたら、向こうの方から黒いバックをのっけたベビーカーが出現!!
”とうとう現れた!!”とばかりに、姉は、忍者のごとく忍び寄り、、、。
すると、、、なんとベビーカーは、ディズニーシーの係員に押され、”落し物センター”に運ばれて行ったのだという。
ということで、姉が”落し物センター”にて引き取ることとなったのだった。
しばらくして、姉は、満面の笑みをうかべ、ガッツポーズをしながらベビーカーをガラガラガラガラいわせながらもどって来た。
う~ん、このときほど姉が輝いて見えたことはない。
私は、時おり、姉のことを「り香ちゃんてさ~、男の中の男だねー。」と形容することがあるのだけれど、この時もまた、「やっぱりさー、男の中の男だよ!!」と言わずにはいられなかった。
私たちは、それから、船にサッサと乗り込み、わき目も振らず、ホテルのレストランに向かった。
もちろん、その日の夕食のビュッフェ、”よしこのおごり”であったことは言うまでもない。。。
おしまい
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