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そうちゃん・20歳になる/「忘れないよ」

今日は、そうちゃん(長男・知的障害あり)、20歳のお誕生日。

長かったような、あっという間だったような20年でした。

この「忘れないよ」は、昨年の夏、新聞に作品募集があり、応募したものです。

(佳作でした)

久々のブログ、今日はこれをお届けします(笑)!

 

「忘れないよ」

 ふわりとした手。

そっとその手をにぎると、じいわりじわりと温もりがつたわってくる。

それは、お日さまの光をいっぱいにあびたふっくら座布団のよう。

そんなあたたかさ。

 

 まだうすっぺらな胸。

ふと手をあててみる。

どっくんどっくん、どっくんどっくん。

少しもリズムを変えることなく、力強く刻まれるその音に耳を澄ます。

「ちゃんとボクは、ここにいるよ。」、とその音は証明する。

 

 夕日にそまっていっそう茶色く光る髪に頬をよせる。

ふと、子供の頃家にいた雛を思い出す。

思わず息をスーっとすいこみ、フーっとはく。

うっとりする香り。

 

深く目をつぶってみる。

「何もちがわないじゃないか。」

「どこもかわらないじゃないか。」。

そんな思いが次第に静かにこみ上げてくる。

それは悲しみ。

体の底からわき上がってくる確信。

そして希望。

 

 あれから十九年。

迷いがあるときは、いつも君の手をにぎり、胸に手をあて、髪に頬ずりしてきた。

 

幼い頃、私は小さな子供が好きだった。

ある日、母に言ったことが頭の片隅にかすかに残る。

「ママ、赤ちゃんって、かわいいよね。

ねえ、私ね、大きくなったら、いつまでも赤ちゃんのまま大きくならない赤ちゃんがほしい!」。

そして、私の赤ちゃんとして初めて生まれてきてくれたのが君だった。

思いがけず、あの時の願いが叶ってしまったのかな。

 

君は十九歳。

背がのびて、とっくに私をみおろすようになった。

けれど、まだおしゃべりすることはできない。

身の回りのいろいろを自分ですることはできない。

でもね、君はいつもニコニコととろけそうな顔をしながら私のことを「ママ。」とよび、パパのことを「パパ」とよんでくれるよ。

それがどれほどうれしいことか。

それがどれほどありがたいことか。

 

そんな君が家を出て、もうすぐ一年になるね。

それは、君が小さい頃からずっと目標にしてきたこと。

「学校を卒業したら、なるべく早くこの子を手放そう。君ひとりになっても、しっかり前をむいて生きて行けるように、思いきって手放そう。そして、新しい生活を見守り、ずっと君を応援していこう。」

 

でもね、空があかね色になる頃になると、きまってバッサリと翼をもぎとられたような気持ちになったよ。

一歳か二歳かの知力しかもちあわせていない君を手放すことは、果てしなく遥かな思い。

それは、ふわふわと飛ぶタンポポの綿毛。

風に流されるままに飛んでいくタンポポの綿毛を、ただただおいかける気持ち。

そのうちに、どんどん空高く飛んでいくものだから、たちどまり、行く手を見送っていくしかないような、そんな気持ちだったよ。

 

だけどね、目をとじて思い出すの。

その手のぬくもりと胸のどくどくと髪の香りを。

そうするとね、心が静まってくるんだよ。

そして、心が決まってくる。

 

今日もあなたのいる南の空を眺めています。

夏の入道雲がもくもくとしていて、さわやかな風が耳元でそよそよしています。

お元気ですか?

そうちゃん。

お元気ですか?

 

 

 

 

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そうちゃん」カテゴリの記事

コメント

ちはるさん
そうちゃんのお誕生日を心からお祝い申し上げながら、

九州地方の地震でちはるさんは、ご家族はどうされているかと それが一番胸を占めています。

投稿: たかの | 2016年4月16日 (土) 06時01分

九州の千春さんは、どうしているだろう?と思って、ブログを開くとそうちゃんのお誕生日のブログが 更新されていました。ご家族、皆さん大丈夫でしょうか。そうちゃんはどうしているでしょうか。無事を祈っています。

投稿: はやまま | 2016年4月16日 (土) 21時23分

お久しぶりです!こちらは皆、元気にしています。お気遣いくださってありがとうございます。
地震のおそろしさを、またあらためて感じます。。。

投稿: たかのさん&はやままさんへ | 2016年4月17日 (日) 12時55分

ちはるさんお声が聴けてよかった。 地球に、九州地方に、熊本に(友人が八代にいます)愛の想いを光にしておくります。今できることを。少しでも早く被災地のみなさまが心身穏やかに過ごすことができますように。

投稿: たかの | 2016年4月17日 (日) 18時25分

千春さん 皆さんお元気との事、良かったです。余震が落ち着くよう祈っています。

投稿: はやまま | 2016年4月18日 (月) 17時33分

ちはるさんはご存知かもしれませんが、何がされているか、又私自身 何ができるかを探す中で出逢った 福岡市長の高島宗一郎さんのブログを読ませていただいて参考の一つにさせていただいています。

投稿: たかの | 2016年4月25日 (月) 06時54分

とても素敵な詩ですね。読んでて涙が出ました。
ちはるさんのブログ大好きです。

前回、息子がソトスかマルファンの疑いがあるとコメントした者です。
遺伝子検査でマルファン2型と呼ばれるロイスディーツ症候群と言うものだと確定しました。

確定したらなんだかスッキリして、以前より息子を愛せるようになりました。
ちはるさんのブログにも随分と助けられました。
これからも読ませていただきます。

投稿: まゆみ | 2016年4月28日 (木) 23時15分

そうちゃん、20歳おめでとうございます!!
10歳のお誕生日の頃、ちはるさんのブログに出会い10年の年が経ったと知りました。
同じ名前の我が家の息子が病を得て、親である自分の弱さへの不甲斐なさ、先々への不安など自分自身でがんじがらめになっていた私を少しずつ緩めてくれたのがちはるさんのブログでした。
この10年、私が原点に戻ろうとした時に何故か思い出すのは、そうちゃんとちはるさんが遊園地の乗り物で何故か笑いが出て止まらなかった、というシーン。

そして、素敵な詩ですね。ちはるさんとそうちゃんの五感たっぷりの触れ合いを感じ、じんわりあったかい気持ちです。

投稿: こころ | 2016年6月 2日 (木) 00時46分

昨夜のNHKテレビ「自閉症の僕が・・・」を見た縁で、貴女のブログに届きました。つよい優しさはどこから生まれるのでしょうね?
私の姉は二人の障害を持った娘を授かりました。それからの20年あまり姉の家族(夫と長男)と私の母の生活は、この子たち(一人は三歳でなくなりました)をどのように受け止めるか、長い年月の中でこの子を授かったことの意味を感じることができるようになりました。親として人間としての姉の成長は凄味を帯びていました。まさに自分の人生をかけてこの娘を受け入れていました。
 誰にもまねのできない人生でした。今は安らかに二人の子供たちと一緒にいることでしょう。素晴らしい人生になることを祈っています。 今の私の仕事も このような経験があるからだと思っています。 私のFacebook:Takeshi Nogata

投稿: 野方健志 | 2016年12月12日 (月) 09時30分

初めまして。自分も自閉症や知的障害などがある3人の子供のママです。長男は19歳で知的障害があり障害者枠で働いてます。次男も学校休みガチで、3番目も言葉遅いしもう疲れきって生きていてもしょうがないんじゃないかな?って思ってる時に、そうちゃんママさんのブログにお会いできました。うまく言えないけど、そうちゃんママさんの明るいブログで元気もらいました。ありがとう

投稿: のあママ | 2017年1月27日 (金) 11時15分

はじめまして。
行正り香さんから、ちはるさんのブログを知り、いつも楽しく読ませていただいてました。昨年、我が家に生まれてきてくれた娘がダウン症を持っており、さらに勝手にそうちゃんに親近感を持つようになりました。お忙しいとは思いますが、またちはるさんの文章を読ませていただける日を楽しみにしています。

投稿: ぼてこ | 2017年8月16日 (水) 16時12分

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