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あれから一年

季節がひと回りして、あれから一年。。。

 

その人は、背が高くスラリとしていて、ダンディ。

髪に少しの白髪がまじっていた。

いつも爽やかでニコニコっ。

自分のことを“おいちゃん”(北九州弁?で、“おじちゃん”を意味する。)と言う。

 

おいちゃんがジョギング前の準備体操をしている時。

そしてまた、セルリアンブルーの、おいちゃんの車を磨いている時。

私たち(私と子供)は、なぜかマンションの駐車場でおいちゃんに会うことが多かった。

私が車をとめて降りると、必ず、そのおいちゃんは、準備体操を中断して、車をゴシゴシしている手をピタリとやすめて、こちらにやって来た。

そして、

「おかえりなさい!

おつかれさん。」。

「たいへんね。」

(またこの“たいへんね。”がサラリとしていて、爽やかったらない。)

 

そう言うのが早いか、そうちゃん(長男・17歳・知的障害アリ)が早いか、そうちゃんは、グフフフと笑いこけながら、おいちゃんのもとに駆け寄る。

すると、おいちゃんは、片手でそうちゃんと握手。

もう一方の手は、そうちゃんの肩にまわしガッシリと肩を組み、最後はギュッとハグ。

そして、そうちゃんに、

「こんばんは!

がんばってるね~!」。

そうちゃんと会うと元気がもらえる、と言っては、

「ありがとう~。

ありがとね!」。

と、ハグ。

 

そうちゃんがタッタッタッ、と、舌をならすと、おいちゃんも必ず、タッタッタッ。

(そうちゃんは、うまくおしゃべりができないので、こういうやり方でスキンシップをとる。)

おいちゃんと別れてエレベーターに乗り、上の廊下からそうちゃんがタッタッタッ、と舌をならすと、吹き抜けの下の駐車場には、おいちゃんが立っていて、上を見上げながらいつまででも、タッタッタッ。

そうちゃんは、そんなおいちゃんが大好き。

だから、部屋から外をのぞいては、おいちゃんが会社から帰ってきた時、ジョギングから帰ってきた時をみのがさず、おいちゃんの姿をみつけると、キヤッキャッ笑いながら、うれしくて飛び跳ねながら、手を振っていた。

 

そしてまた、私たち一行が帰ってくると、マンションの裏口の扉をサッと開け、エスコートしてくれたおいちゃん。

そして、おいちゃんは、時おり言った。

「おいちゃんも、子供がほしかった~!」

「子供が三人もいて、いいね~!

にぎやかだね~!

うらやましい!」。

(おいちゃんは、女優さんのように美しい奥さまと二人暮らしだった。)

 

そうちゃんがおいちゃんのことを大好きで大好きで仕方ないので、私がおいちゃんにそうちゃんの気持ちを代弁してあげたところ、おいちゃんはニコリと笑いながら、

「そうなのよ~。

おいちゃんね、そうちゃんみたいな子供に人気なのよ~。

ふしぎと。

これ、昔から。

おいちゃんが子供の頃から、むこうからやってくるのよ~。

慕われちゃってー。」

と笑った。

それは本当で、おいちゃんがそうちゃんを手招きしておいでおいでしているのではなく、そうちゃんがおいちゃんに吸い寄せられるように向かっている感じ、なのだ。

おいちゃんの前には、“そうちゃんは障害があるから。”という特別な垣根が存在しないことを、そうちゃんは一番よく知っていたからかな?

 

そんなおいちゃんが、一年前、突然救急車で運ばれていった。

偶然その姿をみて、“はやく元気になりますように。。。”と祈ったけれど、おいちゃんはそのまま、帰らぬ人となってしまった。

そうちゃんは、おいちゃんがもうここにはいなくなってしまったことを私たちのように頭で理解することはできない。

けれど、そうちゃんは、おいちゃんがもうここにはいないことを、すでに知っている。

あのセルリアンブルーの車が駐車場から消えた瞬間から、そうちゃん特有の動物的なカンで、おいちゃんがもういなくなってしまったことを体いっぱい理解している気がする。

だから、以来、ひとこともおいちゃんのことを言わないし、おいちゃんの姿をもとめて窓をながめたりしない。

 

そうちゃんの大切な人が亡くなって一年。

あらためて、本当に悲しい。。。

 

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そうちゃん」カテゴリの記事

コメント

電車の中で読みました。涙を堪えました…。ちょっとエレベーターの中で先程嫌な事があったのですが、こんな温かいおいちゃんもいるんだなーと心が温かくなりました。

投稿: はやまま | 2013年11月14日 (木) 16時12分

そうちゃんのまわりには、心でかわす交流がたくさんあるんですね。それはとても幸せなことだな、いいな、と思いました。

投稿: ゆうまま | 2013年11月14日 (木) 22時14分

そうちゃんへ☆
そうちゃんが大好きなおいちゃんが居なくなってさみしかったね。かなしかったね。でもおいちゃんは空の人となって きっとそうちゃんに会いに来てくれたことあったでしょう?あったと思うな。
伝わる、感じる、わかるって理屈じゃないんだよね♪♪♪

投稿: たかの | 2013年11月14日 (木) 22時51分

素敵な出会いと素敵な関係ですね。
いつも素敵な子育てのお話を楽しみに
拝見させていただいております。
お姉様の子育ても素敵。
きっと、ご姉妹を育てられたお母様の
おおらかさからなのでしょうね。

投稿: せい | 2013年11月18日 (月) 08時57分

サラリとした文章なのに涙涙。
ハンディキャップを持ったお子さん、サポートする親御さんを見かけると応援したく、励ましたく思いますが余計なお世話でかえって迷惑かと心で応援しています。
おいちゃんの爽やかで素敵な接し方。
私もそんな人になりたりです。
何よりちはるさんの明るくそうちゃんを愛おしんでいる姿が周りをそうさせるのだと思います。

投稿: まあこ | 2013年11月18日 (月) 17時20分

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