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辞め時(1)

子供の頃、私は(姉も)、ピアノとお習字を習っていた。

ピアノは、気がついたら習っていた、、、という感じだけれど、始めたのは、確か幼稚園の頃。

そして、お習字は、小学校1年生から。

転勤のため、お習字は小学校4年生まで習って、それでおしまい。

けれど、ピアノは、転勤のたびにいったんは辞めるのだけれど、また新しい土地で、母・よしこが、どこからか必ず先生をみつけるので、高校に上がるまでずっと習い続けた。

                                                             

たった二つの習い事ではあったけれど、私は、

”あ~ これさえなければ!!”とか、

”もっと自由になりたーい! 

お稽古さえなかったら、今日も○○ちゃんの家に遊びに行けたのに!!”と、よく思っていた。

みんなそうだと思うけれど、お稽古ごとというのはクセモノ。

最初は、もう楽しくて楽しくて仕方がないけれど、やがて、どの道へ向かおうとも、”練習””地味な努力の積みかさね”なくしては、前に進めなくなってしまう。

                                                            

私も姉も、特にピアノに関して言えば、よしこの思い入れ(よしこは、音楽の勉強がしたかったけれど、夢叶わなかったらしい。)というか、期待が大きかったゆえ、私たちは、余計に反発。

日々、辞めたくて辞めたくて仕方がなかった。

とにかく、毎日、あの黒いピアノに向かうことさえ、ため息の一つもしてからでないと、足が向かなかった。

                                                              

だから、私はよく、よしこに直訴した。

「ね~、ママ、お願いがあるんだけど、、、。

ピアノ、もう、辞めたい!!

お願いだから、辞めさせて!!!」。

けれど、よしこは、顔色ひとつ変えずに言った。

「な~に言ってんの。 

ピアノは辞めさせません。」。

そして、”どうして辞めたらダメなのか(なぜ続けなければいけないのか)”というところの面倒くさい説明は、いっさいヌキ。

                                                            

次によしこの口からでるのは、

「ママはね、習いたくても習えなかったのよ!

も~、いいかげんにしなさいよ~!

ピアノは、ちゃんとお月謝はらってるんだからね~!!

もっといっしょうけんめい練習しなさい!!!」だった。

そのセリフを、何度聞いたかしれない。

                                                             

私は、そのたびに、

「ねーねー、そうだよ~!

そうだよね~?

もったいないよ~、ママ!!

この先、上手くなりそうもないし、練習する気もまったくわかないんだから、お月謝がもったいないよ~!!

だから、辞めさせて!!」。

そのセリフも何度言ったか数えきれないけれど、そうすると、よしこは、また言う。

「な~に言ってんの。

ピアノは絶対に辞めさせません。」。

、、、と、ここにまた、もどる。

                                                            

そういう時のよしこは、”ブルブルっ”とするほど、怖かった。

それ以上たて付く気には到底なれないくらい、怖かった。

”これ以上は、ひと言だって何も言わせない。”という迫力が、そこにはあった。

その場面に遭遇するたびに、

”こりゃー、一生 ピアノは辞めれそうもないぞ、、、!!”という、気が遠くなる思いさえしたものだ。

                                                       

そんなこんなの繰り返しで、私は、結局、高校に上がるまでずっとピアノを習い続けた。

今にして思えば、あの時、辞めなかったからこそ、ピアノもエレクトーンも資格をとることにつながり、教えることができるようになり、今の自分がある。

だから、あんな状態のまま続けさせてくれたよしこには、感謝しかない。

今となっては、よくぞあそこまで練習しない憎たらしい子供に、お金を払い続けてくれたもんだと、感心する。

                                                             

けれど、ピアノに関していえば、あの頃は、”したくないのにさせられている”という、なんともいえない不自由で納得のいかない気持ちが、心の奥にずっとくすぶっていた。

                                                             

よしこ自身は、私が幼稚園の頃から、エレクトーンをはじめた。

(なんと、今も現役です!!)

子供たち(私と姉)とは対照的に、コツコツコツコツと、毎日マジメに練習。

よしこもまた、ずーっと辞めずにレッスンを続けていた。

                                                              

だから、そんなよしこを見て、私は、

”きっと、よしこは、辛抱強く、努力の人。

とにかく何事も、どんなに苦しくても続けなさい!!

続けてこそ意味があります!! 

ここで辞めては、今までの努力も水の泡です!!”というタイプなのだと思い込んでいた。

                                                             

ところが、実際は、、、そうでもなかったのだ。

それは、私が成長していくにつれ、わかったことなのだけれど、そこには、意外なよしこの姿が、、、!!

                                                             

次回につづく

                                                           

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