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タクシー

今日は、昔話。

かれこれ、、、9年も前の話です。。。

 

そうちゃん(長男・11歳・知的障害アリ)が療育園(障害のある子供たちが通う通園施設)に通いはじめたのは、そうちゃんが2歳になった時。

そこは、母子通園(お母さんと子供が一緒に通う)だったので、週に二日、そうちゃんと一緒に療育園へ。

 

当時、まだ立派なペーパードライバーだった私は、(車で行けば20分くらいの)療育園に、電車とタクシーをつかって通っていた。

そうちゃんの乗ったベビーカーをカラカラカラカラ押して、家から歩いて10分くらいの駅へ。

肩には、着替えやオムツでふくらんだバック。

電車に乗って、次の駅でおりる。

 

おりた駅には、エレベーターがなかったため、まだ歩けない、普通の赤ちゃんよりかなり大きめだったそうちゃんの乗ったバギーをかかえ、荷物もそうちゃんも、ゆさゆさ揺らしながら、構内の長い階段をフッフッいいながら、おりていく。

 

駅を出ると、少し歩いたところに、療育園へ向かうタクシー(療育園がいつも手配してくれた)が待っていた。

タクシーは、親子二組が一台に乗り込むシステムになっていた。

こんな感じで、JRや私鉄の特定の駅から、療育園に向かうタクシーが準備されていたのだ。

(帰りも。)

交通の便がいいとはいえない場所に療育園はあったので、自分の車で行けない私にとって、このタクシーは、本当にありがたかった。

 

通園を手伝ってくれるそのタクシー、タクシー会社は、いつも同じだが、運転手さんは、毎回ちがう。

私とそうちゃんは、療育園に着くまでの、しばし15分ほどの短い間、タクシーに乗っていたのだけれど、運転手さんによって、たったその15分でも、ずいぶんと車内の雰囲気はちがった。

 

乗る時に、サササッと運転席からおりてきて、バギーをトランクに乗せるのを手伝ってくださる方もいれば、「すみません、トランクを開けてください。」と言うまでノーリアクションの方。

ニコニコと笑顔で車内に迎えてくれる運転手さんもいれば、”ぶーっ”と怒ったような顔で迎えてくれる運転手さん。

 

時には、私とそうちゃん相手に、藪から棒に、”タクシーの仕事は、いかにお客さんをサッとつかまえて、チャンスをとらえ、売り上げを上げていくことが大切か”、、、ということを語り、、、。

そこまではよかったけれど、そのうちに、”療育園に迎えに行って、だらだらと待たされ、たった15分くらい乗るお客さんのために時間をさくことは、割りにあわないんだよね~。”ということを言う運転手さんもいた。

 

今の私だったら、「ちっ。」。

(もちろん、声にだしては言いませんが(笑)、心の中で”あっかんべ~!”ですな。)

、、、ですむところだけれど、その時の私には、そのひと言さえ、ガックリだった。

 

、、、というのも、まだ、その当時、療育園に行く事は、決して楽しいだけのことではなかったからだ。

もちろん、療育園に行けば、自分と同じ境遇のお母さんとおしゃべりもでき、元気づけられることも多かった。

けれど、それ以上に、そこへ行けば、そうちゃんのお友達は、もちろん、障害をもった子供ばかり。

その子供たちの中に、そうちゃんがいるということは、いやおうなしに、そうちゃんにも障害があることを認めることを余儀なくされる。

 

自分の中で、わかってはいるつもりでも、毎回、療育園に行くたびに、ズンと気持ちは重くなる。

家に帰ってくると、いろんな思いが複雑にからみあい、そして、いつも悲しかった。

そんな、やっとこさ、がんばって療育園に通っている時に、フッともらした、タクシーの運転手さんの言葉には、本当にガックリさせられた。

 

けれど、一方で、今も忘れられない運転手さんがいる。

療育園の帰りに乗せてもらった、年輩のその運転手さんは、しばらく私と話したあと、言った。

「あのねー、子供っていうのは、健康であってでさえ、育てていくっていうのは、大変なものよー。

なのにね、体が弱いとか、障害がある子供を育てるってことは、並大抵じゃないよね。」。

そして、「私はね、こうやって、あなたのように、まだ歩けないような子供さんを抱えて、一生懸命に子供のために学校に通ってるのにね、どうして、自宅まで送ってあげられないのかなって、残念でたまらないよ。

もどかしい思いがするよ。」。

「タクシーで駅まで送っても、それからまた電車にのったり、歩いたりしないといけないわけでしょ?」。

「晴れた日は、まだいいけど、雨が降った日は、大変でしょ?」。

「国はね、なんのために税金というものをとっているのかと私はいいたいよ。

あんなねー、つまらない橋とか建物をたててないで、こういう必要なところにお金は使うべきだと思うよ。」。

その日は、雨がじゃんじゃん降る日だったのだけど、

「あのね、ここからは、私の気持ち。

メーターは、おろすから、家まで送っていくよ。

 あのね、もし、また私が療育園にお迎えに行くことがあったら、その時もまた、送ってあげるからね。」。

そう言って、家のまん前まで送ってくださった。

 

その時の思いは、今も忘れない。

胸がいっぱいだった。

心の奥から、なんだか言葉にあらわせない、ありがたい気持ちでいっぱいだった。

今日、初めて会ったのに、私とそうちゃんのことを精一杯、応援してくれる人がここにいることが、本当にうれしかった、あの日。

 

たった15分の短い時間に、一人の人間のそれまでの人生や、これから先の生き方さえ垣間見た気がする、タクシー通園。

たかがタクシー。

されどタクシー。。

 

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