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雨の日のバス停<前編>

そうちゃん(長男・10歳)は、養護学校・小学部4年生。

養護学校は、小学部・中学部・高等部という呼び方をする。

(なんだか、私立の名門校みたいで、ちょっとかっこいい~。)

小学部・中学部は、スクールバスに乗って通学。

で、高等部になると、スクールバスには乗れなくなり、自分一人でバスや電車に乗って通える子供は、そうやって通学。

それができない子供は、保護者と一緒に通学。(バスだったり、電車だったり、マイカーだったり。)

養護学校の子供たち、、、知的障害とひとくちに言っても、程度も個性もまちまちで、すぐには障害があるとは思えないような程度の軽い子供もいるけれど、高等部になったとたん、自分一人でバスに乗って、学校に通える子供、、、となると、そう多くはいないと思う。

 

そうちゃんが、幼稚園(知的障害のある子供が通う幼稚園)だった頃、”勉強会”に参加した時の事。

そこには、いろんな年齢層の”障害のある子供をもつお母さんたち”が来ていた。

で、勉強会もあともう少しでおしまいという時になって、サッと、あるお母さんが立ち上がり、「あのー、、、。 私、これから息子を迎えに行かないといけないので、お先に失礼させていただきます。」と言い残して、会場をあとにした。

私は、ハッとした。

「今から、、、お孫さんのお迎え?」と言った方がしっくりくるような、白髪の、そう、70歳はゆうに過ぎていると思われる、背中の丸い女性だった。

”あっ、、、そっか、、、。 私も、そうちゃんのこと、これから、そうちゃんが何歳になっても送迎していくのかー、、、。”

パタンと閉まった扉を目で追いながら私はそう思うと、なんだか不思議な気持ちになった。

その時も、私は、そうちゃんをバス停まで送迎していたけれど、当時、そうちゃんは、まだ幼稚園生。

そうちゃんのまわりの同年代の子供たちのお母さんも、私と同じように、幼稚園のスクールバスのところまで送迎しているのを身近に見ていたので、特に”子供の送り迎え”について、気をとめたことはなかった。

 

あれから数年がたち、今も私は、毎日、送り迎えのためにバス停へ。

でも、この送り迎え、私、実は好き。

4年生にもなるんだから、一人でプーッと出かけてくれて、フーッと帰ってきてくれたら、そりゃそっちの方がもちろんいいけれど!

でも、心のどこかで、こうやって、そうちゃんのスクールバスまで送迎できる日々を大切にしたいな、、、という思いがある。

そう思うきっかけになった事が、いつだったか、2年くらい前かな、梅雨の雨降りの日にあった。

 

ある朝、私は、バス停でスクールバスを待っていた。

(そのバス停には、そうちゃんの他、あと3人、養護学校のお友達がいる。

毎朝、みんなで、バス停からちょっと離れた駐車場のところで、スクールバスを待つ。)

そうちゃんと傘をさして、今か今かとバスが来るのをのぞき込んでいたら、ふっと、女性と目があった。

バスを待っているらしく、バス停のところに立っていた。

その女性は、60歳すぎくらい。

私ではなく、息子のそうちゃんを、じーっと見ていた。

見つめていた。

ときおり、うなずきながら、あたたかい、何ともいえないまなざしで、そうちゃんを見つめていた。

”あっ、、、。 あの方のお子さんも、障害があるのかなあ、、、。”と、私はその時ピンときた。

、、、と思ったとたん、その女性は、ゆっくりと私とそうちゃんのところへ吸い寄せられるように近づいて来た。

「今から 学校ですか?」

そして、「何年生?」

ゆっくりした口調で聞き、やはり、自分の娘さんにも重い知的障害があり、昔、養護学校へ通っていたが(その頃は、高等部がなく、中学部が終わったら、もう卒業だったらしい。)、中学卒業と同時に施設に入り、今も、その施設に入所しているということだった。

その女性は、「あー、、、なつかしい。。。」

そう言って、そうちゃんの手をにぎったり、頭をなでたりした。

 

間もなく、スクールバスが来て、そうちゃんがバスに乗り込む番になると、その女性は、そうちゃんが乗り込むのを後ろから支えてくれ、「行ってらっしゃーい!」と言った。

そして、ニコニコしながら、そうちゃんがバスに乗ったのを見届けた後、クルリとバスに背を向け、私に話してくれた。

「こういう子供はね、お友達と一緒に遊ぶこともできないから、かわいそうでしょ。。 だから、私は、娘を中学部卒業したらすぐに、施設に入れたの。

一生、安心して生きられる場所をみつけてあげないと、この子たちはかわいそうですよ。。

それがこの子たちにとっての幸せだと思うんです。

親が年をとってもぎりぎりまで面倒見て、それから仕方なく施設っていうのが、一番かわいそうだと思って。。。

手放すことは、勇気がいることだけど、とても大切なの。」

そして、「だからこそね、親が元気なうちに、いい施設を見つけてあげないとね。。

私は、子供が中学部卒業するまでに、なんとかいい所を見つけてあげようと思って、それこそ全国、施設という施設を訪ねてまわったの。

施設は絶対に、自分の目で見ないといけません。

それで、ようやく、ここなら子供を安心して預けられる、、、っていう所を見つけて、今、そこに娘はいるのよ。

私は、本当にそれでよかったと思っているの。」と、ゆっくりと、でも、何か、ものすごく説得力のある、芯のある口調で言った。

そう言った後、その女性は、養護学校のバスに続いてやって来たバスに乗り込み、私に手をふりながら、足早に去って行った。

 

次回につづく。

 

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そうちゃん」カテゴリの記事

コメント

はじめまして!ランキングから来ました。
息子さんのそうちゃんは『小学部』なんですね。
ほんと私立有名校みたいです(笑)。

うちはイギリスで、友達の娘さんが養護学校に行っています。
普段はスクールバスですが、最近、日曜に預けられる学校が見つかったとかで、その日はマイカーで1時間くらい運転して、がんばって送り迎えしているようです。

送り迎えの時間を大切に・・というのにジンときてしまいました。
このお話の続きも楽しみにしています。

投稿: みぱせ | 2006年7月 6日 (木) 19時44分

子どもさんを育てている方は、「今しかないこの時期」を大切にしようって思うのでしょうね。ちはるさんは、どんな時も必要以上に深刻になることなく、ユーモアを忘れずに生活してらっしゃるんだなといつも感じます。周囲の人も爽やかな気持ちになれますよね。私もそんな風に、生活の中に楽しいことを見つけながら暮らしたいなあと思いました。
後編、楽しみにしています。

投稿: ぱる | 2006年7月 7日 (金) 16時44分

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ブログを始めて良かったと思う事は私と同じように悩んでる人、私と言う人間を知ろうとしてくれる人に本当にちっぽけで、何も出来ない私でも知ってもらえる価値がある、生きてる意味がある、そう思える瞬間がある事・・・・ [続きを読む]

受信: 2006年7月 6日 (木) 08時47分

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