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「なるようにしかならない。」

前回ブログと同じく、小児病棟・そうちゃんの病室より。

 

父は、そうちゃんが入院中、東京に来ることはなかった。

母・よしこから父に、電話で逐一、そうちゃんの一連の話は伝わっていたと思う。

“初孫が、生後すぐに救急車で運ばれ、入院。

ミルクさえ自分の力で飲むことができず、心臓も悪い。

さらに、感染症にかかり、熱もでて、新生児だけに、これから、どういう事態をまねくかわからない。”、、、という、ドラマでしか見たことのないような、最悪のシナリオ。

、、、この状況を、母・よしこは、いったい、どういう風に伝えたのだろうか。。

なにしろ、よしこ、実は、ものすごく心配性。

だから、ただでさえ、凍りつき、息も止まるほどのこの話に、よしこの悲観的な意見も大いに加わり、父には、この世の話とは思えない程のビックリ級で伝わっていた事と予想される。

それだけに、父は、遠い地(実家)で、めいっぱい心配してくれていたはずだ。

(ちなみに、伝言ゲームに、よしこが加わったなら、話が次の人に正確に伝わる事は、極めて難しいと思う。 いろんな意味で。。)

 

父は、そうちゃんが入院している間(1ヶ月半)に、3回もお札を送ってくれた。

大分県にある高塚地蔵という所の”病気平癒”のお札。

お札が届くたびに、父はいったい、どんな気持ちで車を走らせ、これをもらいにいってくれたのだろうか、、、と胸が痛んだ。

「パパ。 そんなに心配いらないって。 大丈夫だってば!」と、そのひと言が言いたくてたまらなかったが、実際、大丈夫な状態では全然なかった。

そのひと言が言えなかった。。

そうちゃんの枕元には、父からのお札が3枚ならんでいた。

幸い、そうちゃんは、小児病棟にいる間に、心臓の状態がよくなり、手術はまぬがれ、退院できることになったが、もともとは、感染症が治ったら、手術をするため、小児病棟から心臓の病棟に移ることが決まっていた。

もしあれ以上、入院生活が長引いたら、お札はいったい、何枚になっていたのだろうか、、。

(軽く10枚は、ビッシリとベッドにならんでいたような気がする。。。)

 

当時、私はまだ、携帯電話を持っていなかった。

だから、父は、毎日、実家に電話するようにと、テレフォンカードを送ってくれた。

夜になると、その、恐ろしく古く、陰気な病棟の一番すみっこにある、公衆電話のある所まで、まるで、”肝試し”に行っているような気持ちになりながらも、毎日、実家に電話しに行った。

父は、電話口で最後に言う言葉は、決まっていた。

「ちはる(私のこと)ちゃん。 もう、いろいろ考えても仕方がない。 なるようにしかならないんだから。」

この言葉は、今でも、私の中に残っている。

その時は、「うん、そうだよね。。」と答えたものの、いろいろ考えないわけにはいかず、考えすぎて、不安がさらなる不安をよび、頭の中は、こんがらがって、すごい事になっていた。

けれど、それも、時間がたつにつれ、どういう事なのか、わかってきた気がする。

(心配事は、”考えても考えても、逆立ちしたって、どーにもならない事”と、”努力のしようによっては、解決できる可能性がある事(考えたぶんだけ成果のある事)”に、頭の中で、だいたいきれいに二つに分けられることに気付いた。

後者だったら、ボ~ッとなんて、悩んでいる場合ではない。

どうやったら解決できるのか、もっと、よーく考えて、アイディアをふりしぼらなくっちゃいけない。

けれど、前者なら、そこは、すっきりきっぱり、あきらめるしかない。

考えても何も変わらないのなら、考えるだけ無駄、、、という事になる。

これは、父の考え方の基本で、とてもシンプルなものだ。)

 

父は、テレフォンカードとともに、病室のテレビは見たいだけ見れるようにと、テレビカード用のお金も送ってくれた。

疲れた時は、タクシーに乗れるようにと、タクシーチケットも送ってくれた。

「なくなったら、すぐにまた送るから、どんどん使いなさい。」という言葉を添えて。。

病院で使うお金というのは、虚しいばかりで、欲しいものをやっと手にいれた時のような、”ヤッター!” ”ヤッホー!”という喜びとは無縁で、使えば使うほど、「なんだかねー。。。」という気持ちに、ややもすると傾きがちだが、父は、「こういう時のために、お金はある。 こういう時にこそ、お金を使いなさい。」と言った。

父は、”目には見えないけれど、本当は大切なところ”にお金を使う事を惜しまない。

 

ダンナさんの転勤で、引越しする事になり、あらたにマンションを探していた時。

父は、「広さとか築年数はどうでもいいから、向きのいいマンションを選びなさい。」とアドバイスしてくれた。

”そうちゃんが、一日の大半をすごす部屋(リビング)が、南に面しているマンションがいい。”と言う。

”そうちゃんは、普通の子供よりは、体が弱いはずだから、日当たりのよい南向きの部屋で、気持ちよく過ごせるような部屋を探してあげなさい。”と言った。

私は、その後も何回か引越ししたけれど、どこも、リビングと和室は南向き。

寒い冬も、リビングは、ポカポカと暖かい。

ベランダのプランターに植えた、横に縦に葉をいっぱいに茂らせるお花と一緒で、どうやら人間も、太陽の光をいっぱいに感じた方が、のびのびとゆったりと過ごせる気がする。

 

父は、夏になると、まだハイハイさえできない、寝たきりのそうちゃんのために、”そうちゃんが気持ちよくすごせるように”と、藤の敷物をプレゼントしてくれた。

窓にピッタリとくっつけて、リビングのカーペットの上に、その敷物を敷く。

まだ、力なく、動く事ができないそうちゃんと、二人で並んで、ねっころがる。

すると、不思議と、藤本来のもつ、ひんやりとした何ともいえない感触が伝わってきて、スーッと体の熱をすいとってくれ、子供の頃、芝生の上に寝ころがった時のような、さわやかな気持ちにつつまれ、気持ちが落ち着いた。

それは、クーラーの涼しさとは、まったく違うものだった。

太陽の光にしても、植物の藤にしても、”自然が与えてくれる、あたたかさと心地よさはすごいなあ、、、。”とつくづく思った。

人間が作ったものは、やっぱりかなわない。

そして、そんな、目に見えない大切なことを知っている父もまた、豊かだなあ、、、と思った。

 

今でも、夏になって、藤の敷物を敷くと、そうちゃんは、「じーじ! じーじ!」と言って、”じーじに、これ、もらったんだよね。”と私の方を見てニコニコして、本当に嬉しそうに笑い、気持ちよさそうに、ねっころがる。

そうちゃんは、そういう、人のあたたかい心を感じる才能を、誰よりも敏感にもっている。。。

 

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P.S.

”豚肉の梅しそ巻き”にたくさんのコメントをいただきました。

皆さんの気持ちをありがたく感じながら、明日にでも、夕食メニューを”豚肉の梅しそ巻き”にして、たっぷりたっぷり味わって食べてみようと思います。

どうもありがとうございました。

 

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そうちゃん」カテゴリの記事

コメント

失礼します。

はじめまして!世良と申します。
唐突に申し訳ありません。
只今ランダムにアンケートをお願いしております。
テーマは「LOHAS(ロハス)と聞いて何を思い浮かべますか?」です。
お手数ですが、私のブログにコメントいただけるとありがたいです。
ご協力よろしくお願いいたします。

投稿: ms6 | 2006年6月 9日 (金) 14時28分

お父様の「なるようにしかならない。」この言葉、私もとても励まされました。
ちはるさんとそうちゃんにあふれるほどの心配と愛情。
そして振り返らずに、前を見つめる姿勢。
そうちゃんにあたるものはぽかぽかの日差しだけでなく、ご家族みんなからの愛情も存分にあるのですね。
そんなそうちゃんだから今があり、笑いアリの誰とも比較できない幸せな今があるのだと思いました。
いつも心にふれるお話をありがとうございます!

投稿: こころ | 2006年6月11日 (日) 14時18分

>そうちゃんは、そういう、人のあたたかい心を感じる才能を、誰よりも敏感にもっている。。。


そうですね。本当にそうですね。

私は帰宅すると若干忙しいもので、
大抵はこっそり会社でこちらのページを拝見しているのですが、
うっ・・・と胸が詰まって、さっきデスクで涙目になってしまいました。

ちはるさん、本当に素敵な方ですね。

投稿: keiko | 2006年6月12日 (月) 13時19分

はじめまして
りかさんの「まごころ」で知ってこちらのブログ拝見させて
いただいています。
実は、私は、縁あって、りかさんのホームステイ先の
ジョンのところへ訪問したことがあり、
ジョンからりかさんのお話はよく伺っています。
(ジョンはそれはそれは嬉しそうにりかさんの話をしていました!)
ですから、お会いしたことはありませんが
なんだか身近な方のように感じております。

りかさんのお料理の本のエッセイからも
ちはるさん、おとうさん、おかあさんの暖かい家庭の様子が
感じられますが、
今回のちはるさんのお話を読んで、
ますますおとうさんは素敵な方なんだなあと思いました。
学歴とか地位とかお金とか
そういうものでなく、ほんとに人間にとって大切な物を
もっていらっしゃるご家族ですね。
また、ブログに遊びに来させてください。

投稿: なつこ | 2006年6月14日 (水) 21時49分

はじめまして。
図々しくも、私の父と重ねて読ませていただきました。

私の場合は、妊娠・出産に伴ってトラブルがいくつかあったり、それ以前にも、受験や就職活動などで不安がバクハツしてポロポロと涙をこぼすような時には、なぜかいつも立ち会う羽目になる父・・・。
かなり頑固で厳しく、叱られた思い出ばかりの父なのですが、そういう時だけは黙って話を聞いてくれて、最後に「心配しても仕方がない。なるようにしかならないんだぞ。」と穏やかに励ましてくれました。
(そして実際、悪い方には転ばずに済みました)

オットを見ていても痛感しますが、男親って、女親のように騒ぎ立てない反面、心の中でそれ以上に心配してくれているようですね。(騒ぎ立てる男性も、騒がない女性もいるのでしょうが)
ちはるさんのご主人も、お父様と似たような懐の広い方だという印象を受けています。

お父様といえば、そうちゃん大好物のにんじんスープを考案されたのですよね?
お姉さまの本の中で、一番多く作らせてもらっています。(おいしい!)

これからも、楽しみに読ませていただきますね。

投稿: ようこ | 2006年6月19日 (月) 00時49分

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