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心にしみた豚肉の梅しそ巻き

そうちゃん(長男・10歳・知的障害アリ)は、生まれた次の日、呼吸が苦しくなったため、救急車で大学病院に運ばれ、約1ヶ月半、入院する事となったのだが、その時の病院での話。

 

そうちゃんは、NICUに20日ほど入院し、その後いったんは家に帰ってきたが、また、その数日後、呼吸が苦しくしくなり、発熱したので、再び大学病院へ。

それから、1ヶ月ちょっとの間、小児病棟に入院した。

感染症にかかっていたため、部屋は個室となったのだが、まー、その病棟・病室の古かったこと! 古かったこと!!

なんでも、戦前からの建物らしく、まわりが焼け野原になってしまった中、この病棟は、大丈夫だったらしい。

古いだけならよいのだけれど、そこには、健康な人をも、”どーにかして、病気にしてやるぞ~!”というほどの、スゴミのある陰気さがあった。

昼間でも十分、コワイのだけれど、夜になると、もう、それはそれは、、、!

パリパリにはがれた、ねずみ色の壁。

うす暗い廊下の蛍光灯、、、。

病室を出て、トイレに行くのさえ、かなりの勇気がいった。

幸い、そうちゃんの病室は、ナースステーションの目の前だったので、消灯になっても、そこから明かりがもれ、いつも、看護婦さんがバタバタと出入りしていたから、まだよかったけれど、あれが、隅っこの部屋だったりしたら、、、ヒャーっ、考えただけでも恐ろしい。。。

 

そうちゃんは、東京で生まれた。

ちょうど、姉も東京に住んでいるので、里帰り出産ではなく、母・よしこが私のところに手伝いに来てくれた。

よしこは、お産前から来てくれ、そうちゃんが入院してからも、ずっと私に付き添ってくれた。

でも、これからどのくらい、この入院生活が長引くのか、検討もつかなかったので、よしこは、いったん実家へもどることになり、代わりに、今度は、義母が手伝いに来てくれた。

病室には、24時間、必ず誰かがいなくてはいけない事になっており、私と義母は、毎日交代で病院に泊まった。

 

よしこが、今日、実家に帰るという日、「ちはる(私のこと)ちゃん。 ごはんだけは、しっかり食べてちょうだいね。 それだけは約束してちょうだい。」と、よしこは、涙ながらに私に言った。

私は、「うん、わかった。」とは言ったものの。。。

なにしろ、”24時間付き添い”なので、部屋を出れるのは、トイレか売店に行く時くらい。

(それでさえ、わざわざナースステーションに、ひとこと言ってから行かなくてはならなかった。)

 

病院のまわりには、けっこういろんな飲食店があったけれど、そういうわけで、のこのこと食事にいける環境ではなかったし、そういう気分にもならなかったので、ごはんの時間になると、仕方なく、トボトボ売店へ。

よしこの心配そうな顔がチラチラと浮かぶので、「さっ、お弁当! お弁当!」と、とりあえず向かうものの、さびれた、活気のない売店には、食欲をふるいたたせてくれるような食べ物は、何ひとつなく、私は、おにぎりすら食べる気持ちになれなかった。

 

そんな中、私の姉が、夕食時になると、病室に差し入れを持って、よく来てくれた。

仕事帰りに、わざわざ時間をさいては、来てくれた。

「もー、今日は、ごはん、食べなくってもいいかも、、、。」とか思っている時に限って、不思議と、トントン、、、とノックする音。

ガラガラーっとドアが開き、「お弁当 買ってきたよー。」

姉は、デパ地下の美味しいお弁当とデザートと雑誌を、いつもセットで持って来てくれた。

“天むす弁当とシュークリーム”だったり、”おこわ弁当とプリン”だったり。。

”もう、食べ物なんか、のどを通らない、、、。”と思っていても、姉が持ってきてくれたお弁当だったら、パクパクパクパク、、、ぺロっと食べられた。

姉は、いつも、私が、「美味しい。 美味しい。」と言って食べるのを、最後まで見届けた後、「じゃー また来るからねー。」と言って、帰って行った。

姉は、今日会社であった事とか、友達の事とかを私に話してくれ、お弁当とともに、陰気なピーンと張りつめた病室に、外の新鮮な空気を運んでくれた。

 

そんな中、今でも忘れられないのが、姉の手作り弁当。

わざわざ会社帰りに、いったん家にもどり、私のために作ってきてくれたお弁当。

(その頃、姉は、まだ独身で、ワンルームマンションに住んでいた。

そこには、キッチンといえるような所はなく、いつも、卓上コンロを使って、チャチャチャっと料理をしていた。)

私は、その時の、白いタッパーに入ったお弁当を、今でもはっきりと覚えている。

タッパーを開けると、そこには、豚肉の梅しそ巻きと、鶏の五目煮と、玉子焼きと、ゆでアスパラと、おにぎりが入っていた。

仕事で疲れて、その後、会社から離れた病院へ来てくれるだけでも大変なのに、、、。

 

私は、そのお弁当を見たとき、今までガマンしていたものが、グーッとこみ上げてきた。

買ってきてくれたお弁当はパクパク食べられたのに、、、、。

胸がいっぱいになって食べられない。

姉が、「せっかく作ってきたんだからさー、食べてよー。」と言うので、一口、口にいれたら、たっぷりワサビのきいたお寿司を食べた時のように、鼻がつんつんして、涙がポロポロでてきた。

この時のお弁当の味は、忘れられないなあ。

”おいしい”とも、”味がいい”とも違う。

なにか、ただ、ひたすらに、”ありがたい”味だった。

ひびわれた、乾ききった土に、少しずつ水がしみ込んでいくようだった。

そして、私は、それを一つ一つ食べながら、この、小さい四角いタッパーの中に、たくさんの命が入っている事を、今さらながら気付かされた。

豚も鶏もアスパラも、この私のために、命を削って、巻かれたり、ゆでられたりしているのかと思うと、残さず大切に食べなくちゃ、、、という気持ちが沸いてきた。

今、姉(行正 り香)は、料理やお菓子の本をたくさん出版しているけれど、(近々、”ワイン”の本もでます。。)まさか、姉が本を出版する事になるなんて、思ってもいなかった、あの時の、豚肉の梅しそ巻き。。。

忘れられないなあ。。。

 

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そうちゃん」カテゴリの記事

コメント

今日のお話、泣けました。行正家の姉妹愛、心にしみます。特に
姉り香さんをよく知っている者としては、彼女の心遣いの細やかさ(性格はアバウトだけど)がつらかった時の千春さんにどれだけ支えになったか、よ~くわかる気がします。育児でたいへんでしょうけど、ブログがんばって続けてください。元コピーライターのおねえちゃんより文章力はあると思いますから。

投稿: oxxsan | 2006年6月 2日 (金) 16時06分

はじめまして。ブログのランキングからお邪魔しました。
私は、8ヶ月の男の子の母親ですが、子供はアレルギーが
ひどく、入退院を繰り返しています。病院の付き添いは
とてもストレスがたまり、少しいるだけでも心身が参りました。
ちはるさんは、産後の大変な体で、そうちゃんの付き添いを
されたんですね。
ちはるさんも、ちはるさんのお母さん、お姉さんも、
なんて素敵な方なんだろうと思いました。
とても思いやりにあふれたご家族なんですね。
タイトルの「心にしみる」という言葉にジーンとしました。
私はブログも初心者で、半月前に、「ママ元気せらぴ~」
という日記をはじめました。がんばるママさんを、毎日
1人ずつ紹介しています。ちはるさんやよしこさんのこと、
いつか紹介できたらうれしいです。

投稿: みゆき | 2006年6月 2日 (金) 16時16分

はじめまして。子供の入院ってきついですよね。私も2人子供がいます。2人とも生まれてすぐから入院しました。その後も入院生活は何度か経験しました。下は個性的で今も訓練に行ってますが元気です。毎日ばたばたで大変だけど、頑張ってます。
人の優しさって心にしみますよね。けなされたらなにくそって頑張れるけれど、辛いときの優しさはやっぱり心にしみて、いつかどこかで誰かに恩返ししたいなあって気持ちになります。それに、当たり前だと思っていたことが当たり前じゃなかったことに気づけたことで、自分も少しは大人になれたかもしれません。

お姉さんの本、楽しみにしてます!

投稿: ラッキー | 2006年6月 2日 (金) 18時41分

初コメントです。夫がお姉さんと同じ会社にいます。数年前お姉さんの本をいただき、お姉さんマニアになったひとりです。お姉さんの本には必ずちはるさんやお母様のお話がでていて、そのうえちはるさんのブログまで発見してしまい、わたしは行正家の一員になった気分で読ませていただいています。
今回の記事、思わず泣いてしまいました。
わたしはツライ時に優しくされると、胸がグググっとしめつけられるような気持ちになります。4人兄弟なのですが、ちはるさんと同じく、やはり兄弟に慰められたりすることが多いです。兄弟をつくってくれた両親に感謝しています。
これからもブログ楽しみにしています♪

投稿: shim-june | 2006年6月 3日 (土) 21時10分

ちはるさんの文章は、その場の状況が手に取るように伝わってきて、今回は特にぐっと胸に迫るものがありました。家族がつらい目にあってるときって、家族の絆が強まったりしますよね。
素敵なご家族に囲まれ、これからも、楽しい心温まるエピソードお聞かせください。

投稿: ぱる | 2006年6月 4日 (日) 07時51分

病院の中にいると外の様子や、社会の変化にも気付かず、ただ自分の子供と向き合う日々。
眠り顔を見ながらいろいろ想い、願い。
そんなときにお姉さまが運んできてくれたお弁当は、ちはるさんを体力的にも元気付けるだけでなく、お弁当から四季を感じたりと社会とのパイプにもなっていたのかもしれませんね。
家族って本当にありがたいですね。

投稿: こころ | 2006年6月11日 (日) 14時08分

読みながら、私も涙ぐんでしまいました。
いいお話を拝見させていただきました。
ありがとうございました。

投稿: keiko | 2006年6月12日 (月) 13時13分

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受信: 2006年6月 3日 (土) 04時43分

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