辞め時(7・完)
前回ブログのつづき
まもなく、憧れのピアノが家にやってきた。
自分で稼いだ、ありったけのお金をはたいて買った、ピアノ。。
母・よしこは、ピアノが来た日、
「ちはる(私のこと)ちゃん、、、それにしても、思い切りがいいわね~、、、こんなの買っちゃって。
でも、これで、貯金、すっからかんになっちゃったわね。
、、、これでよかったのかしら~?」と、ちょっと心配そうに私に聞いたけれど、私は、すっぱりと言った。
「うん、いいの、いいの。
また働いて、お金貯めるから!」。
”会社を辞めた”と思ったら、なんということはない。
これからも、ちゃんと会社に行くのだから、お給料も、ちゃんともらえる。
うしししし、、、(笑)。
も~う、私は、うれしくてうれしくて仕方なかった。
これで、あの喫茶店にわざわざ足を運ぶことなく、自分が好きな時に好きな曲を、このピアノに(自動演奏機能)弾いてもらえるのだ。
会社は忙しく、相変わらず一日中バタバタしていたけれど、この時間を楽しみに、頑張れる。
よしこもピアノが大好きなので、ピアノを置いているリビングで、私とよしこは二人、時間があれば、お茶をすすりながら、ピアノちゃん(、、、と、当時、私は、そう呼んでいた。)の弾いてくれる演奏に耳を傾け、うっとりした。
そんな中、私が”会社、辞めたい! もっと自分には違う空間があるんじゃーないだろうか。。”と思っていた気持ちは次第に薄らいでいった。
そしてまた、私の気持ちだけでなく、会社もまた、ちょっとずつ時間とともに変わっていった。
環境や人も変わり、私にだんだんと余裕がでてきたのも加わり、”用事があるときは、すっぱりと早く仕事を終えられる会社”へと変わった。
結局、私は、結婚するまでの約5年間、ずっと仕事を続けた。
(だんなさんが転勤族のため、これから先は、どこの地へ行ってもできる、母・よしこのようなエレクトーンやピアノを教える仕事をしたいなあ、、、。
そう思い、エレクトーンの勉強をするため、その時は、会社をすっぱり辞めた。)
ちょうど入社2~3年目ごろ、私は、「明日にでも辞めちゃいたいわっ!」と思ったことが数えきれないくらいあった。
けれど、それが、本当に”辞め時”だったかは、結局のところ、だれにもわからない。
だって、いつの時も、大切なことは、今、すぐには、わからない。
自分の足元には、本当に大切なことは、落ちていない。
”本当に大切なこと”というのは、「まったくも~、やってらんないわー、、、。」とかなんとかブツブツ言いながらも、一歩一歩、前に歩き続けることによってのみ、その道の先の先に見えてくるものなのかもしれない。
現に、よしこも、制服の胸のポケットにしまっていた”辞表”をゴミ箱にポイと捨て、仕事を続けた先に、私の父がいたのだ。
同じ職場で二人は出会い、そして、結婚した。
人生、わからないもんだなあ、、、。
私も、あの5年間を、また経験したいと思っても、もう二度と同じ経験はできない。
会社で学んだのは、仕事ではなく、人生そのものだった、、、ということに気づいたのも、ごく最近のこと。
そして、あんなに大変と思っていたのに、すぎてしまえば、楽しかったことしか思い出せない。
だから、何事も、“辞めたい時”こそ、”ふんばりどころ”なのかもしれない。
あの時、買ったピアノ。
今も私のそばに、ちゃんといます。
昔といっしょ、少しも輝きを失わないピアノちゃん、今も、本当にお世話になっています。
ずっと私を見守ってくれるかのように、リビングの南側、いちばん日当たりのよい場所を陣取って、いつもデンとしております。。。
おしまい
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